第3回 全国プラネタリウム大会・日立2007レポート 2007.6.20 Wed. 〜 22 Fri.
2007年6月20日〜22日、日立シビックセンターにて全国プラネタリウム大会・日立2007が開催されました、もちろんカガクノトビラプロジェクトも参加、その模様をお届けいたします。
前回の名古屋大会で、国内のプラネタリウム関係の団体は日本プラネタリウム協議会(JPA)に一本化され、その後既存3団体は全て解散しました。またJPAも今回の日立大会が発足して初めての総会となり、これから活動も本格的なものとなっていく第一歩を踏み出すこととなります。今後の業界全体の方向性を見極める上でも重要な大会といえるでしょう。
日程は3日間。大まかなスケジュールは以下の通りです。
6/20 | JPA総会、研究発表・実践報告I、番組上映、情報交換会 |
6/21 | 研究発表・実践報告II、企画セッション1〜4、分科会A〜D、ベンダー展示・物販、演劇鑑賞 |
6/22 | 研究発表・実践報告III、企画セッション5〜6、閉会式、オプショナルツアー |
今回カガクノトビラプロジェクトは展示がないため、参加は私一人。研究発表はありますが、展示のお世話がないため気楽なものです(笑)。総会開始少し前に会場(2F多用途ホール)入りし、総会へ。壇上のスクリーンには、前回の名古屋では3つあった星が一つになった大会のマークが映し出されています。
総会も順調に進み、理事のお三方から新理事長として大阪市立科学館の加藤賢一氏、副理事長に名古屋市科学館の北原政子氏が選出され、これでJPAとしても新体制が整いました。
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参加者受付中 | 三会が合流、星が一つに |
天球劇場は傾斜式 |
総会後、9Fの天球劇場へ移動。早速研究発表・実践報告のスタートです。北九州市立児童文化科学館の中野氏からホクレア号イベントの報告、(株)リブラの鷲巣氏からデジタルコンテンツの紹介、(有)AND Youの金子氏から低価格フィルムデジタイズマシンの紹介と続きました。中でもデジタルコンテンツの紹介ではメーカーの枠を越えて様々なプログラムが次々と紹介され、非常に興味深いものでした。特に今回は大型映像系でエンタテイメント寄りのものがいくつか紹介され、ガンダムの新シリーズや銀河鉄道999の3D版などの既存キャラクター系はもちろん、絵のタッチや雰囲気にこだわったものもいくつか見られ、プラネタリウム向けコンテンツの幅が広がりつつあることが感じられました。
実はこの後日立シビックセンターさんの番組「ぎんがのきてき〜宮沢賢治を探す旅」が上映されたのですが、トラブルで同期や映像が乱れてしまったのは残念でした。
そして本日のメインイベント(?)、情報交換会は隣接するホテル日航日立へと会場を移して盛大に催されました!これは立食、バイキング形式のパーティーで、参加者の交流を図ろうというもの。私もいろいろな方とお話しさせていただきました。そんな合間に周りを見回すと、星のお兄さんはホテルマンらしく食事をチェック?(美味しゅうございました/笑)、大平さんは相変わらずの人気者で人だかりが途切れることがありません。そんな流れで情報交換会終了後も、各々のグループが日立の夜の街へ繰り出していくのでありました……。
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情報交換会 | 2日目研究発表 |
高橋メソッドでの発表も |
明けて2日目、この日はベンダー展示・物販・ポスター展示と、研究発表・実践報告・企画セッション・分科会が中心の一日です。まずは9時からベンダー展示・物販を見て回った後、9時半からA・B会場に分かれての研究発表・実践報告。以下発表者とお題の一覧です(敬称略)。
A会場(2F多用途ホール) | B会場(5F502会議室) | |||
9:30 | 久野素子 (浜松科学館) |
機器更新に伴うソフト面でのリニューアル | 井上毅 (明石市立天文科学館) |
ツアィス&メガスター |
9:45 | 本部勲夫 (京都市青少年科学センター) |
プラネタリウム制御装置の更新について | 澤村泰彦 (平塚市博物館) |
平塚市博物館「里に降りた星たち」展について |
10:00 | 山村真紀 (慶應大学DMC) |
動画配信とプラネタリウム〜ミュージアム・チャンネル・プロジェクト | 中島健次 (那須香大阪天文台) |
プラネタリウム周辺施設とのタイアップによる地域総合イベントで倍増! |
10:15 | 安田岳志 (姫路科学館) |
公開天文台白書2006について | 山西正博 (鳥取市さじアストロパーク) |
最近のさじアストロパーク |
10:30 | 春日了 (プラネターリアム銀河座) |
プラネタリウムの方向改善の一案(科学への回帰) | 福永則子 (東急まちだスターホール) |
東急まちだスターホール27年の歩み |
私はA会場で聴講したのですが、この中で注目したのは浜松・久野さんの発表でした。以前は制作会社からオート番組を購入・投影していたものを、機器更新に伴い生解説+自主制作番組へと方針を変更。これを数年かけて計画的・段階的に導入されたとのこと。番組の自主制作は様々な面でハードルが高く、館のスタッフの方々への負担も大きくなるわけですが、数年を費やしてスキルの修得や作業の分担などをじっくり行ったのでしょう。スタッフのみなさんの熱意とご苦労が偲ばれました。
研究発表の次は企画セッション1・2。セッション1は地域ゲストとしてアマチュア天文家で気象予報士の富岡啓行氏のお話、セッション2は2009年の世界天文年について。世界天文年は業界の外へ向かってのアピール活動が重要になりますので、ここはカガクノトビラの出番が増えるよう、いろいろ画策せねばなりませんね!
さて早々に昼食済ませ、朝見きれなかった展示へ。今回は特にD-MAXさんや東京現像所さんなど、プロジェクター+ワイドレンズによるデジタルコンテンツ向けのソリューションを提示されているベンダーに目が向きます。また大型映像系からの出品も粒ぞろい、その中でもカガクノトビラ的注目株は「宇宙エレベータ 〜科学者の夢見る未来〜」。非常に限られた映像を見ただけなのですが、最近流行りのCGでカチカチに固めたSFではなく、軽いタッチで描かれたキャラクターや風景が魅力的、そして何より色使いが秀逸!8月完成予定とのことなので、また試写などが見られたらご報告できればと思います。
午後一番は企画セッション3・4。セッション3が「博物館法」。これは正直あまり興味がなかったのですが、聞いてビックリ!現在多くのプラネタリウムは博物館法における博物館ではなく、類似施設にすぎないのだとか。現在法改正が検討されているとのことで、今後の成り行きには注意が必要のようです。そしてセッション4は「デジタルプラネタリウムの基礎」。この後の分科会で採り上げられる「デジタルプラネタリウム」の基礎編といった感じで、アウトラインの紹介から現ユーザーの声、デジタル時代のシアターデザインといった報告が行われました。
企画セッションが終わると、4つの会場に分かれての分科会です。分科会Aは「初心者研修会 座長:長谷川好世氏(白井市文化センター)」、Bは「デジタルプラネタリウム 座長:田部一志氏((株)リブラ)」、Cは「博物館法 座長:安藤享平氏(郡山市ふれあい科学館)」、Dは「学習投影 座長:井上毅氏(明石市立天文科学館)」です。私はというとBのデジタルプラネタリウム分科会で「小規模館でデジタルコンテンツをかけるには」というお題で発表させていただきました。ここでは8人が発表を行うという構成で、デジタルプラネタリウムへの関心の高さとともに、導入館においても“使いこなそうとする意欲”が高まっていることを感じました。発表者はこちら(敬称略)。
1 | デジタルユニバースについて | 新井達之(葛飾区郷土と天文の博物館) |
2 | 小規模館でデジタルコンテンツをかけるには | 小林道夫(カガクノトビラプロジェクト) |
3 | 究極のスペースエンジン | 高幣俊之 |
4 | 統合制御1 | 菊川真以(つくばエキスポセンター) |
5 | 統合制御2 | 雨森勇一(横浜こども科学館) |
6 | シアターデザイン | 二見広志((有)天窓工房) |
7 | 部分デジタルからフルデジタルへ | 上山治貴((株)アストロアーツ) |
8 | 大平技研のデジタルプラネタリウムへの取り組み | 大平貴之((有)大平技研) |
※カガクノトビラ発表のパワーポイントデータをPDFにしたものはこちら。
分科会終了後は天球劇場に場所を移し、まずは各分科会の座長さんから簡単な報告。続いて昨夜の「ぎんがのきてき」のリベンジ投影だったのですが、再び機器の故障によって見ることは叶わず。最後に劇団ワンズフィルによるプラネタリウム演劇「果〜KAZITSU〜実」(プロローグ+)が行われました。
これにて2日目の公式プログラムは全て終了、その後は例によって非公式懇親会?です。公式プログラム中は発表を聞いたりしているわけで、参加者との交流はこういうチャンスをものにするしかありません。しかし普段からつながりの深い数グループに分かれてしまうため、我々のような新参者や弱小ベンダーは一苦労(名古屋では完全に乗り遅れてました)。1日目は星のお兄さんにくっついて、今日は首尾良く一番大きなグループに同席させていただいて、と今回は多くの方とお話ができて良かったです。しかし日立の飲み屋さんはこの二晩で相当売上が上がったのではないかと(笑)。
長いようで短い3日間。最後を飾るのは企画セッション5、6です。セッション5は「老舗プラネタリウム一斉リニューアル」と題し、ここ数年にリニューアルを予定されている館の中から、何館かの担当者の方のお話がありました。予定の近いところでは、今年10月に千葉市科学館に導入予定の五藤光学製ハイブリッドプラネタリウムに注目。恒星数1,000万個を誇る新型恒星球ケイロンが目玉です!そしてセッション6は「宇宙・天文教育」。JAXA宇宙境域センターの方を迎え、JAXAの宇宙・天文教育への取り組み、JPAとの連携などのお話がありました。
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実行委員のみなさん | 日立シビックセンターのみなさん |
というわけで閉会です。我々を暖かく迎えてくれた日立シビックセンターのみなさん、毎度のことながら運営を支えていただいた実行委員のみなさん、ありがとうございました。そして次の宗像ユリックスのご紹介があり、散会です。午後は恒例の近隣施設へのオプショナルツアーでしたが、私も仕事に追われるのが恒例化しているため(苦笑)、おとなしく東京に戻りました。JAXA筑波宇宙センター施設見学は行きたかったなぁ!
私も今回はじっくりと発表・セッションを聞くことができ、非常に実りのある大会となりました。また多くの館やメーカーの方とお話ができ、カガクノトビラの方向性を考えるのにも有意義な3日間でした。我々のプロジェクトはみなさんとのコミュニケーションを軸に、より活動の場を広げていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
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(記・撮影:コバヤシミチオ)
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